媒体の発達と記憶力 11月18日 1個目

 媒体の発達と記憶力

 

 人間の記憶力は落ちています。

 何故落ちているのか。それはタイトルで解る通り、記憶媒体の技術が進歩しているからです。

 自分は、高校生の時に、携帯電話が出回り始めた世代なので、この現象を体感する事が出来ました。

 友人の電話番号くらい、何も見なくても絶対に忘れない状態。それがあっという間に出来なくなりました。

 実際、人間は記憶力は訓練により培われる部分が多いのです。記憶する習慣が消えてしまえば、訓練の機会を失っているのだから、記憶力が培われなくて当然なのです。

 気になって、調べた事があります。

 オング.W.J(1991)『声の文化と文字の文化』藤原書店

 この本は、文字という強力な記憶媒体が無かった時代での、人間の文化が書かれていますが、目から鱗です。

 想像を絶する程の、記憶力依存文化です。

 道具は便利な方がいい、とは限らないと思いました。

 記憶力に頼らずに生きていける時代が来るならば、どんどん新しい記憶媒体を導入すればいいとは思います。

 しかし、ノートとペンではなく、幼少期から、PCで授業を受ける子供達の映像を見ると、“危なっかしい”と思ってしまうのは自分だけではないだろうと思います。

 最後に脱線します。

 加行で、伝授を受けた時に思った事ですが、記憶を媒体にしている世代が、口伝文化の密教を、覚えられる筈がない、と思っています……。

 実際、伝授は一度切りなので、現代人が覚えきれる筈がありません。

 なので、伝授を毎年聞いて覚えている加行監督の先生が、再び行者に伝えるという形式になっています。

 口伝文化は、どうなることでしょう。